…………。
そんなこんなで、俺たちは夕方まで目一杯海水浴を楽しんだのだったが……。
ミント「あいたた……」
和人「大丈夫か? ミント」
ミント「うう、だいじょうぶくない……」
はしゃぎすぎたのが悪いのか、ミントは足をくじいてしまったのだった。
和人「しょうがねえな、ほら」
少しかがんで、背中をミントに向けてやる。
ミント「……?」
和人「おぶってやるから」
ミント「えっ、でもー……」
和人「たいして重くねえから大丈夫だよ、ほら」
ミント「…………」
……こうして、俺は夕焼け空の下、ミントを背負って帰り道をゆっくりと歩いている。
やよい達は何度も交代しようかと提案したが、俺はそれを断って先に二人だけ帰らせた。
和人(……背中のつるぺた感覚が気持ちいい……)
まさしくこの世の極楽を味わいつつ、俺は歩いていく。
…………。
ミント「和人……」
和人「ん?」
ミント「和人って……頼りになるなあ」
頬を赤く染め、なんだかまぶしそうに俺を見つめながら、ミントがそんな風に言う。
和人「ふふん、今頃気付いたか」
ミント「うん……」
背中の上のミントは、妙に素直だ。
和人「ほら、もう少しで駅だぞ」
ミント「あ、ほんとだ」
坂の向こうに、ようやく電車の駅が見えてきた。
ミント「……もう、歩けるよ?」
和人「ここまで来たんだ、最後までおぶってやるって」
ミント「…………」
きゅっ、と、ミントが俺の首元に強く抱きついてきた。
それは苦しいというよりも、せつない締め付け方で、ドキドキする。
ミント「あのね、和人」
和人「なんだよ」
ミント「……ちょっと、胸の辺りがじーんとしてる」
和人「…………」
とく、とく、とミントの小さなお胸の鼓動を、確かに感じる。
ミント「和人、大好き」
和人「……俺も、お前の事好きだぞ、ミント」
ミント「一杯エッチして、だんだん魔力も溜まってきたけど……」
和人「…………」
そう、魔力が一杯まで溜まったら、ミントは魔界へと帰ってしまうのだ。
俺んちで居候しているのは、だから、そんなに長い間のことじゃないんだ。
ミント「……あたし、もうしばらくは、こっちの世界にいたいなあ」
和人「……お前が望むなら、いつまでだって……」
ミント「…………」
和人「ずっとうちにいてくれたって、いいんだぞ」
ミントは、またぎゅっと俺の首筋を抱きしめて、
ミント「ありがと、和人……」
ちゅっ。
少し潮風に当てられてヒリヒリしているほっぺたに、やさしくキスをした。
…………。
夕焼けに照らされて、ミントの横顔も赤く染まって、産毛まできらきら輝いて。
これは、そんな……ミントがいた夏の日の出来事。